KR AGILUSとコンピュータ支援画像処理とAIの最適な組合せ、Ozmo
窓清掃の自動化のために、
Skyline Robotics社のチームが開発したOzmo。このシステムは、KUKAのロボット
KR AGILUSを、
コンピュータ支援画像処理システム・人工知能(AI)・機械学習技術と組み合わせたものです。従来は3~4か月かかっていた過酷な肉体労働を、
Ozmoの導入によって、自動で半分以下の期間で完了できます。この新開発による利点は、
安全性を考慮し、足場に配置されたスタッフの作業負担を軽減することです。足場の上でファサードに沿って作業する清掃員2人、建物の屋上に1人、必要に応じてさらに地上に1人、というように、
手作業でのガラスファサード清掃には通常、
3~4人の作業員が必要でした。
Ozmoでの作業では、足場・電源・給水・クレーンをコントロールするスタッフが1人いれば十分で、その間に、ロボットはガラスファサードの清掃を行います。
完全な窓清掃実行のために、5年間の準備
確実な電力と水の供給のために、Ozmoは既存の建物メンテナンスユニット(Building Maintenance Unit, BMU)のインフラに適合するように設計されています。足場の一部には、さまざまなセンサやコンピュータが備えられたテーブルがあります。その上には、Lidarカメラ(Lidar:light imaging, detection and ranging。レーザパルスを使用)を備えたロボットアームが配置されています。Lidarカメラは、人体に対して無害なクラス1のレーザを使用しています。このテーブルを既存のファサード清掃用の足場にクランプすれば、すぐにシステムを使用できるようになります。
Skyline Robotics社の社長兼COOであるロス・ブラム(Ross Blum)氏は、Skylineのチームが過去5年間にわたりOzmoプロジェクトに取り組んできたことを語ります。その取り組みにおいて、さまざまな技術的ハードルを乗り越え、必要なコンポーネントや特徴の全てを統合するための手順を繰り返し行いました。それには、産業用ロボットKR AGILUSとそのプログラミングにより、窓清掃を行うときの人の動きを模倣するロボットアームの製造も含まれています。
ビル清掃におけるOzmoの考え
ロス・ブラム氏は、Ozmoシステムの機能や性能を説明する際、人間の感覚との類似性に注目していると語ります。「ロボットアームは、<見る>ことを可能にするLidarカメラと、<触覚>を可能にする清掃ブラシの先端にあるトルクセンサと通信しています。システムソフトウェアは<頭脳>の役割を果たし、Ozmoが超高層ビルのガラスファサードを自動的に降下させるとき、約200回/sのスピードで経路計画を連続で最適化するために、さまざまなカメラとセンサからデータを収集しています」
Ozmoソリューションの核となる部分には、防水使用のKR AGILUSと、ガラスのファサードの清掃を可能にするソフトウェアベースの人工知能が組み合わされています。Skyline Robotics社は、力制御やその他変数をロボットに通知するアルゴリズムを開発しました。それにより、ロボットがビルのガラスにかける必要な圧力を制御できるようになりました。
小型ロボットコントローラーKR C5 microにより自由度アップ
Ozmoのシステムに組み込まれているKUKA
小型ロボットコントローラーKR C5 microは、
世界中のさまざまな足場の重量制限のクリアに大きく貢献しています。KR C5 microの重量はわずか9.8kgで、他の
同等のコントローラより最大16kgも軽量で、さらに省スペースも実現。そのため、Skyline Robotics社は、非常に厳しい重量制限が求められるケースでも、
1つの作業台に複数のKR AGILUSの搭載が可能となります。「管理された環境下でなくとも、ロボットを使用する分野において優位性を保つのが目的です」とブラム氏は強調します。「そして、
KUKAはその目標到達への最適なオートメーションパートナーであると考えています。また
KUKAは、ロボット工学の応用アプリケーションの可能性を広げています。私たちはKUKAのエンジニアと密に協力し、屋外環境に特化した製品の開発を楽しみにしています」とブラム氏は続けました。
突風が吹いてもOzmoは大丈夫
Ozmoに搭載されている技術において、ソフトウェアとハードウェアに大きな特長があります。Skyline Robotics社は、ロボットが窓を清掃している間、ロボットの動きを制御し、常にさまざまな状況に適応させることが可能で、ロボットと足場をリアルタイムでの安定を実現しています。突風やクレーンの動きによる影響など、想定外の環境下での稼働が大きな課題となっています。時にはプラットフォームの片側が大きく傾斜する場合もあります。それに対し、Ozmoはこれらの変数を認識し、ただちに補正することができます。これにより、高品質のガラス清掃と、効率の良い清掃経路が設定されます。また、Ozmoは不安定な足場のカウンタフォースとして機能するKR AGILUSロボットの能力を利用しています。ロボットアームは、足場がブランコのように揺れることを防ぐため、追加の0.5秒間、窓に固定されたままの状態を保ちます。ロス・ブラム氏によると、Skyline Roboticsは、初めてロボットアームをこの方法で使用することができた、唯一のロボットメーカーであると語ります。
ニューヨーク市でのOzmoのプロモーション
Skyline Robotics社は現在、各業界から幅広いサポートを受けています。同社は、650万ドルの資金調達に成功したことをリリースしました。Skyline Standard Holdingsが資金調達を主導し、Kärcher New Venture GmbHやGefen Capitalなどがこれに賛同。Kärcher New Ventures GmbHのコーポレート・ベンチャー部門の責任者であるパトリック・ネンネヴィッツ(Patrick Nennewitz)氏は
「Kärcherは、より効率的で安全な窓清掃のための作業環境を世界レベルで実現するというミッションを掲げるSkyline Robotics社を、引き続き支援します」と述べています。同氏は「ロボットにより変革をもたらし、同時に雇用を生み出すというSkyline社の能力は、他のロボットメーカも見習うべきモデルです」と続けます。ビルはますます高層となり、労働人口が減少する中で、Skyline社の設立は時勢に見合った、社会に必要なソリューションとなりえるのです。